白藤ミコヨの散歩道(山場もオチもない小話)

当記事にはねつ造、想像補填など、本家とは違った要素が詰め込まれています。
それでもよろしいという方は、このままお進みください。

 

※また、特にオチはなく山場もないので、それでもいいよって人はお進みください。

 

 

巡った空き家は数知れず。

あっちにフラフラこっちにフラフラ。

自由気ままに、好きな場所で生きていく。

今日の空き家はどこだろうか?

 

 

蔦が茂り、隙間風が壁の所々に空いた木造2階建て。

子供が走り回れる程度の広さがある庭に、朽ちた木と手入れの跡が見えない雑草の群れ。花も逞しく子孫を作っていて、何世代もの積み重ねの証が量に表れている。

近隣住民は誰も近寄ろうとしない、家主を失った木々の集積体。

 

ふらりと路地裏の、塀の上を歩きながら現れた少女がそれを見つけた。

バランスよく危な気なく、すいすいと家々の隙間を歩いてきた少女は、腹を空かせていた。
夕暮れ時の住宅密集地、塀の上を歩いていると、香るのだ。人間の夕餉のにおいが。

 

食べるようなものどころか、年若い少女が持っていそうなおしゃれアイテム、鞄のような物すら少女は持っていない。

毛先が白い白藤色のゆるやかな髪と、切れ長で瞳孔の開いた紫色の瞳や可愛らしい顔立ちに目を奪われがちであるが、風体は異様で、服飾センスを感じることが出来ない。

ボロ衣のような黒いワンピースと、彼女のためにあつらえたとは思えないぶかぶかのカーディガン。首と片足に着けられたチョーカー、左右で長さも色も違う靴下、どころか靴とスリッパという奇異な組み合わせ。(参考図

拾ったものをそのまま身に着けているとしか形容しようのないファッション、ペタペタと音を立てるスリッパをはきながら、細い塀の上を悠々歩いていた。

 

「……今夜はここにしよーっ」

 

特定の家を彼女は持たない。慣れた足取りで庭へと侵入し、身を低くかがめて耳と鼻を利かせる。家主も、住んでいる者の気配も感じない。虫はいるが、それくらいだ。

がさがさと雑草を踏んでいき、朽ちた玄関扉……ではなく、猫1匹が通れそうな穴に身を入れようとして……

 

「あ゛っ。間違えた」

 

失態を見られていないか辺りを確認してから、少女は扉を開ける。鍵も壊れているのか、誰でも入れるようになっていた。

もしもここが駄目ならば、外壁から二階に渡り、空いている場所を探していただろう。

 

「お邪魔しまーす」

 

踏み入れた家屋の中は、暗かった。所々の穴から入ってくる光源を頼りにすれば、道は見える。しかし明かりを灯さねば、落ちている物や障害物などを見ることは出来ない。

……が、少女の、猫のように見開かれた瞳が爛々と輝いて、それらはクリアされた。

 

腐った床などを回避しながら、優雅な足取りで歩を進める。

間取りを調べて、生活臭が抜けきった空き家の2階へ、足音を立てず軽やかに上る。スリッパはそのままだ。

耳をそばだてても虫の羽音しか聞こえないのを確認して、少女は3つある部屋の内、比較的綺麗な部屋へ入室した。雑貨物は転がっていて、暖をとるようなものはない。

 

「そろそろ寒くなる季節だし、人間くんの体だからお布団のある家を見つけなきゃな―。……あるわけがないんだけどね」

 

ふるりと震える体を自分の腕で抱き寄せて、彼女の親戚がくれた不思議な紙を取り出した。
【鍵となる言葉】を3つ紡ぐと、発光してパソコン一式とポケットWi-Fiが出てくる。

 

紙を授かったとき、「電源とか電気とかどうしているの?」と的外れな質問を少女は親戚にしたことがあった。年若い青年の魔法使いはこう答えた。

 

『これは魔術工房システムのちょっとした応用だよ』

 

そういうモノなんだと少女は納得し、ありがたく使っていた。尽きない電源と、電波を拾いまくるポケットWi-Fi。電気代は親戚持ち。

 

「はっ!? ツイッター見なきゃ……全然更新してなかった―うわー!」

 

瞬速で立ち上がったパソコンに、感度の高いWi-Fiは追従する。1分もしないうちにPC画面にツイッター画面が映し出された。

今朝方呟いた朝の挨拶に、多くのファンが答えている。嬉々とした表情でそれらに高速で返答していく。ファンが増えすぎたら全部に返信できなくなっちゃうかもしれないという不安は、彼女にはない。愛された位の裏返しに、愛したいという全力投球のココロがあるからだ。

 

「今日はどうしよう……配信かな……それとも動画作っちゃうかな? どうしよっかなー」

 

思案すると、お腹が鳴ってしまう。彼女は足についたチョーカーを外して逆さに振った。

 

魔術工房あてに送られた、少女へのプレゼント。それを親戚は【ゲート】を介してある空間に貯蔵している。チョーカーを振ると、その輪っかの中が【ゲート】へと繋がって、中身が少しずつ出てくるという仕組みだ。

 

贈られてきたのは……

 

「チャオチュールだ! ああ、マグロ、マグロだよ、嬉しい!!」

チロルチョコであろうが、高級菓子であろうが、ともかく「自分に対して贈り物をくれた」事実を少女はとても嬉しく思っている。

人間の食べ物ではないが、彼女は一切不満に思うことなく食べた。おにぎり(ツナ)もある。

 

「……あ。もしかしてこれ……食レポ動画とか出せちゃう!? 出せちゃうかなー!?」

チュオチュールの食レポ。そんな動画は自分にしか出せないはず! ネタが出来たと喜び、意気揚々とYouTube検索『チュオチュール Vtuber』で調べた少女は……

 

「うそ……あった……vtuberって広いな……駄目だー……僕って本当に無能だ……」

チュオチュールは少し前、それこそ見つけた動画よりも前に贈られたこともあって、ショックは大きい。折角作ってくれたチャンスを活かせずに先を越されたことは、自分の至らなさが原因だと、周りは皆有能な人ばかりで、僕はなにをしているんだろう? と、クルクル下方下方へと少女の思考が巡りまわって落ちていく……。

「……あ、通知……あっ、ファンアート!? え、ええええ!? 嬉しすぎる……!」

思考は奈落に垂らされた蜘蛛の糸に絡みとられて、あっという間に極楽へと誘われた。ネガティブな自分をあっという間に捨て去り、二番手でも良いじゃないかと動画作成を始める。

……が、人間にこの美味しさをどうやって伝えようか悩み、件の動画を見ると、食べ方のアレンジなども加味されているのを見て、

 

「僕には無理だな!」

 

と速攻諦めた。彼女の辞書に調理方法の知識や技術などは存在しない。

 

結局この日は空き家サーチにエゴサーチ、図書館で無料配布されていたリサイクル資料の本を読みながら1日を過ごした少女。

おすすめの本はないかなーと、『本 vtuber』で調べると、

 

猫背が治る本?? ……もう僕は猫じゃないから大丈夫かなー」

 

図書館のネタも先駆者がいて、中々やることが決まらないなー。そう考えているとそのまままどろみの中に落ち、少女はあくびをして、そのまま眠りについたのであった。

次は歌ってみたか、ゲーム実況の動画作ろうかなと思いながら。

 

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です