VRchat短編紀行「Seat of The Sun God」

もどかしい世界だ。

目の前に映る世界は、ただ一面の黒いキャンバスに描かれた星雲と、手のひらに収まりそうな錯覚を抱かせる太陽。見下ろせば地球も見えるが、感動するほど青くはない。

燦然、というにはあまりにも暴力的な熱を発して止まない太陽が、全ての視線を奪っていく。

自分はどこに立っているのか?

月か、それともどこでもないどこかなのか……そんな疑問すらも燃えてしまう。

 

この何もない宇宙を見事表現したワールドには、場違いな人工物が鎮座していた。

……いや、鎮座するためのもので、黒塗りの無機質な椅子だ。何のために置いてあるのかを考えるときには座っていた私の目の前に……太陽が迫っていた。

私を飲み込むでも、熱で焼き尽くすでもなく、ただそこに太陽が迫っていたのだ。

息を呑んだ。

熱が熱を飲み込む、炎蛇の群れが私の瞳に映っている。

魅入られていた。

一歩一歩と、太陽に近づく私は、この熱を、アバター越しに少しでも体感したいと進む。

好奇心に駆られた私の足元から、踏めしめるべきものが喪失した。

落ちていく。地球へ。

望んでも届かぬ太陽に手を伸ばす私の姿は、さぞ滑稽に映るであろう。

ただそれでも、腕を伸ばし、最後まで太陽を見ていた。遠ざかる太陽。

 

―――気が付けば、元の場所に戻っていた。

 

太陽は遥か彼方にあった、掌に収まりそうなまでに。

振り向けば椅子があった。

私はまたそれに座るため、歩く。

今度こそ太陽に触れるために。

 

(了)

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